巻タリアンニュース 第10号
活躍するOB 昭和38年(1963年)卒
彫刻家 茂木弘行さん
100年にならんとする巻高校である。OBには芸術家も多い。
彫刻の世界で活躍している同窓生・茂木弘行氏の作品は、身近な都市空間の中で共生しており、その作品群の多さは、多岐にわたる依頼主の、厳選した評価としても検証できる。
大学キャンパス・駅コンコース・市庁舎広場・公園・美術館、そこを行き交う人々に、ブロンズ像が語りかける。

現役入学のプレッシャー
「現役入学生は大成するのが難しい」芸大・彫刻科に入学した頃、唯一人の現役合格者として耳にした、この学科のジンクスである。
自分以外、21名の新入生は全てが、既に彫刻界でのプロのような気がした。しかし、茂木弘行の作品に触れた周囲は、その資質・力量に脱帽せざるを得ない。
大学院卒業時、卒業・修了作品の中での最優秀作品に授与される「サロン・ド・プランタン」賞に輝く。
助手を務めた後、1973年からは、世田谷のアトリエで、やがてはその居を越後に移し、彫刻制作に専念。個展・グループ展に精力的な出展する中、モニュメント・コレクション・メダルなどの制作依頼が相次ぎ、一作の作品評価が、次の制作依頼となり、彫刻家としての名声が沸騰、その造形活動は無限に続く。
「公募展には参加しない」一徹を貫く
彫刻家・茂木弘行氏を寸評する、多くの評論家が、異口同音とするフレーズがある。
「妥協のない制作信念に徹する彫刻家」がそれである。
一切の公募展には目を向けず、個展・グループ展のみを発表の場としてきた同氏の信念を、鋭く指摘する。

茂木弘行氏の主なコレクション
上越新幹線新潟駅コンコース 新潟 舞鶴市松島公園 京都
姫路市シンボルロード 姫路 愛知文化センター 名古屋
ドレーバー基金 ニューヨーク 新潟中央高等学校 新潟
北九州市立美術館 戸畑 新潟市役所新庁舎 新潟
東急・青葉台駅コンコース 横浜 ケアハウス十和田 青森
有楽町・日劇東宝 銀座 強羅エグゼクティブコート 箱根
城西大学キャンパス 埼玉 WHO世界保健機関 ジュネーブ
淡路カントリークラブ 兵庫 呉市美術館通り 広島


 平和祈念像「おはなし」
茂木カラー漂うパブリックアート
文化的に洗練された都市は、固有のテーマをアートで表現する。
完成された作品は、そのコンセプトで、静かに応え続ける。

平和都市宣言・立川市
立川市(東京都)は、 戦争の惨禍を再び繰り返す事なく、市民が安心して暮らせる文化都市をめざし、平和都市宣言をしている。
市役所庁舎玄関前には、平成7年8月、高さ1.8Mの祈念像を設置した。
同市の文化振興課には、「傷つかれた幾多の人々の魂を安んじ、平和と自然を愛し、他人を大切に思う心をブロンズ像による、乙女と鳩の語らう姿をもって表現した」とする、作者・茂木弘行氏の制作意図書が保存されている。
銀座7丁目・花椿通りのシンボル
銀座7・8丁目をはさんだ「花椿通り」には、椿をテーマにしたユニークな店舗名が多い。ここの商店振興会は、街路に特別の愛着を注いでおり、両脇に植栽されている「ヤブツバキ」は、出雲の大名が徳川時代に、普請提供した縁で、銀座にその証しを残す。
画廊天国・銀座は、意外とパブリックアートとしての彫刻品を見つける事が少ないが、斉藤益夫氏の寄贈で、茂木作品は、花椿通りで、優しい瞳を永遠に投げかける。

椿を持った少女「はな」

南欧の別荘を思わせるアトリエのある邸宅を、茂木氏の郷里・分水に構え、ここを仕事の拠点にしている。
「制作中の彼に対して、最高の環境つくりを心掛けることが、私の役目」と芸大(声楽科)同窓の奥さんも、下北沢のアトリエからこの地へ、思い入れの深いグランドピアノと移って20年。地元の文化向上にも携わる。
制作対象への深い思いやり、飽くなき情熱、作品の清楚さ、後世に残る作品を次々と発表している同窓生、現代日本を代表する彫刻家・茂木弘行氏の活躍に目が離せない。

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