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活躍するOB 1962年(昭和37年度)卒業 作詞・作曲家 プロデューサー 下村雄士さん |
華燭の典でお父さんが涙する歌、只今ヒット中 結婚式のフィナーレで新郎新婦が両親に花束を贈呈するシーンは、誰もが感動する名場面となる。 娘に対する父親の想いは特別で、幼き頃のけなげな姿が一瞬よぎり、良くぞ今日まで育ってくれたと大概の親はここで涙する。参席者からの暖かい拍手がこの感激を増幅しクライマックスに相応しい。バックには「母さんが夜なべして手袋編んでくれた」などと静かにBGM、又もや親父はウルウルする。 下村雄士さん(西川町出身・ペンネーム北川和久さん)は作詞・作曲の世界で活躍している同窓生である。 自らの感性でこのシーンを詩に託し、子を思う親父の心情を曲にした「幸せに」がヒットしている。 詞が優しくしっとりとしたそのメロディは、今多くの披露宴会場で歌われ、一度聴くと忘れられない。
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カラオケは「なねにのぬのにねな」をうまく発音できると飛躍的に上達する
鎌倉市大船で、声楽、ピアノ、電子オルガンなどを教える総合音楽教室を開設して24年が経つ。 現在は番組制作にも携わり、自社ビルで幅広い年齢層の生徒達に自ら歌のレッスンをしている。 一般に多くの譜面は、作曲家の作った楽譜を先ず歌手の持ち味で歌ってもらい、この歌い方に合わせて楽譜が修正されているものが多い。プロ歌手のための曲であり、大衆向けの楽譜ではないと説く。 下村さんのレッスンには、これを自身で譜面アレンジし無理の無い、聴いて自然な音楽になる工夫をし教室ではその人の歌唱力を最大限に生かす歌いかたを身につけさす。 |
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レッスンでは生徒の持ち味を先生が見つける 歌唱指導の極意は、「指導者が歌い方を押し付ける事無く歌い手の特徴をつかみ、これを丁寧に伸ばしてやる事」という。 しかし音楽には基本がある。「正しく歌える基本は発音である」と教室の壁には「なねにのぬのにねな」などとボイストレーニングの練習用に使用する様々な訓練用紙が目に付く。 |
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番組制作は忍耐がないと勤まらない TVK(テレビ神奈川)で放映している「主役は友遊」は下村さんがデレクターを務める人気の地域密着型番組である。30分番組に使用するシーンのカット数は300以上もあるが取材制作のカット数は5000シーン近くにもなってしまう。 出演者と綿密な打ち合わせをし、意図どおりに撮ったつもりでも後にパソコンで画面検証し、音響や色彩に修正処理に時間を費す。主役が自然体で映らなかったら撮り直すしかないという。 |
巻高ブラスバンド部創設秘話 1961年春 3年に進学した当時、野球部の活躍が目覚しく、試合になると応援団が駆けつけていたが、ブラスバンド部はまだ無かった。 野球部の友人から、「管楽器と打楽器で派手に応援できないか」ともちかけられ、ならばブラバンを作ろうと一大決心した下村さん、先生に掛け合い、鈴木行三生徒会長に創部の話をした。 なかなか踏ん切りのつかない生徒会を説得し、漸く部創設の権利と予算を獲得する事ができた。 生徒役員会で決ったブラスバンド部創設予算10万円也。「やったあ・これで待望の楽器が買える」。出身中学の曽郷中(現・西川中学)の吹奏楽部は全国レベルにあり、大きな大会での優勝経験もある。巻高へ進学した9名のOBは、楽器をこなせるし、音楽仲間を集めるのは容易であった。 因みに西川中学はこの伝統を継ぎ、今でもマーチングバンドでは全国レベルにある。(西川中学校 高杉善典校長談) |
楽器店での葛藤と決断
「アドバイス有難うございました。おいくらでしょうか」 店員は「いい楽器が選べて良かったですね。エー、全部まとめて23万でございます」と愛想がいい。 「ヒェー、23万!?」びっくりしたのはいうまでも無い。生徒会予算は10万円。今更断れない。暫くは値引き交渉し、落ち着いた金額は20万円。これ以上は値引きできないと言う。こっちもいい音を出すためには楽器編成を譲れない。「判りました。20万円でお願いします」 これが高校時代3年間の生活で下したの最大の決断となった。あとは何とかなるさ。トランペット・トロンボーン・クラリネット・サックスなどがやっとの事で部活の財産となった。10万円を渡し昂奮した面持で、一目散に西川町の家路へと急いだ事を憶えている。 9本の楽器は数日後、学校に届いた。皆で大急ぎで開梱した。「中古にしないと戻されるぞ、急げ」 かくして、巻高において新調楽器による、仲間9人編成のブラスバンド部が誕生したのであった。 これが30年後には、巻高同窓生で名指揮者・竹内公一氏の指導を仰ぐ恵まれた環境の部活となり国際音楽祭で演目となる程芸術性の高い、田中賢(長岡市出身)の作品を演奏できる迄に進歩して行く。 支払い差額の件は、学校と楽器店でスムーズに行ったみたい。40年経つが何もいわれた事は無い。 |
JASRAC(日本音楽著作権協会)メモ
音楽シーンには、著作権が必ず付帯してくる。作詞・作曲家の権利は保護され、使用者側の制限もJASRACで登録・管理をしている。 下村さんの作品にも曲ごとにコード、ペンネーム、そして歌手名が登録されている。今日もどこかのカラオケで唄われている。 |
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音楽・テレビの世界などで業界人として活躍しておられるが、かつてはスポーツマンとして屈強な体格を生かし、昭和40年代には、関東社会人ラグビーチームの自衛隊でロックを務め当時の強豪チーム警視庁、東芝、リコーなどと対戦し、敵にプレッシャーを与える男として名を馳せた。 決断が早く、自説を曲げない親分肌でありながら、一方ではロマンチックな作詞でムーディ音楽を演出する。教える際のモットーは、「自分が恐ろしい先生と思わせない事」だそうである。 我が子の結婚式に涙する世の父親の為に、素晴らしい詩を生んでくれた心優しい紳士である。 |
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