天文コラム「星空のかなたに」
vol.12 星座の王 オリオン

「オリオン」、その強くて美しい音の響きは本当に魅力的だ。
凍てつく寒さのなかで、キラキラとダイヤモンドのように美しく、実に堂々と輝くその姿には感動する。

オリオン座は、ギリシャ神話の狩人である勇者オリオンが、右手にこん棒、左手に退治したライオンの毛皮を持った姿に描かれている。一直線上に三つ並んだ星は、古来日本では「三つ星」とよばれ、オリオンの腰のベルトにあたる。腰にさした剣のところには、M(メシエ)42といわれる有名な美しい星雲がある。

この「オリオン星雲」は時間をかけて、写真に撮ると、生まれたばかりの若い大型の星の放射エネルギーによって、まわりのガスが、鳥が羽を広げたような姿に輝いて見える。誕生したばかりの星、これから生まれようとしている星の卵を抱く、まさに星のゆりかごのような場所である。現代天文学が、大質量星の生まれつつある現場として、最も注目している領域である。

ところで、オリオン座の左上の赤い主星は、ベテルギウス(「巨人の肩)を意味する)、右下の青白い星はリゲル(「巨人の足」)といい、ともに1等星である。その色の対比もあざやかだ。ほかにも2等級の明るい星が集まってあの特徴ある雄大な形を造っている。

また、三つ星は「天の赤道」に位置して、真東から昇り、真西へ沈むことから、航海の指標されていた。安永四(1775)年の俳人旦水の「佐渡日記」のなかでも、「三ツ連たる星」すなわち「オリオン座の三つ星」を目当てとして、船を進めれば、方位を誤らないということが明記されている。そして、古くから航海の神とされる住吉三神(底筒、中筒、上筒之男命)は、この三つ星を神格化したものだともいわれている。

最近では、エジプト・ギザにある三つのピラミッドの配置と大きさが、オリオン座の三つ星の星相互の位置関係と光度に、驚くほどよく対応しているという説は、大きな話題をよんでいる。

このように、オリオン座は古代から現代にいたるまで、多くの人々が関心を寄せ続けてきた星座でもある。

2月の中旬ともなると、夜8時ころ、東の空からは春を代表する星座、しし座がすでに見えている。雪国の長い冬もあともう少しで終わりだ。春はすぐそこまで来ている。

オリオンに 年新たなる誓ひ立て(陽)

オリオン座と冬の大三角
(屋根と星のある風景 冬)


オリオン座とおうし座
 (県立自然科学館プラネタリウムにて)


オリオン星雲<M42>
 (県立自然科学館 60cm反射望遠鏡にて撮影)
Jan.2004


1980年3月卒 天文部OB(前新潟県立自然科学館天文学芸員)
巻高校教諭 中沢 陽

E-mail:nakazawa.yoh@nifty.ne.jp
HP(URL):http://member.nifty.ne.jp/nakazawa-yoh/index.html
テーマ曲:星空のかなたに(Copyright:中沢 陽 1995/Piano:大澤俊秀)
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