天文コラム「星空のかなたに」
vol.14 方角石といかりぼし

新潟市四ツ屋町の住吉神社境内に置かれた方角石
 新潟市四ツ屋町1丁目の日和山(ひよりやま)住吉神社境内に、方角石が置かれている。
 方角石は、石面に十二支による方位が刻まれており、子が北を、卯が東、午が南、酉が西をそれぞれ示している。
 帆船時代、海の具合や船の出入りを見る必要から、どの港町にも港近くの高台に、空模様を見て天気を予測した日和山があった。そして、そこには方角を見定める方角石(方位石)が置かれていたという。
 この、住吉神社境内にひっそりと置かれた方角石も、港町として栄えた新潟の、当時の面影を残すものである。
 ところで、晩秋から初冬にかけて、北の宵空で五つの星がW字形に並んでいるのがわかる。これが有名なカシオペヤ座だ。
 カシオペヤ座は、真北の空に輝いている北極星を見つけだす時によく使われる。方法は簡単で、下図のように、二つの星を結んだ線をそれぞれ伸ばし、その交点と、Wの真ん中の星とを結んで、その長さを5倍すると、ちょうど北極星にあたるというわけだ。
 この季節、カシオペヤ座は、地平に低く横たわる北斗七星に代わって北極星を探し出すための重要な指標となる。
 昔の船乗りや漁師たちもそのことを知っていたようで、しかもこの天上のWを船のいかりと見て、「いかりぼし(錨星)」という和名が日本各地に残っている。新潟や佐渡の漁民も、きっとその名前を使っていたにちがいない。
 またさらに、カシオペヤ座は真冬の宵空で、北の空高くM字を描くことから、その並びを山並みに見立て、「やまがたぼし(山形星)」という呼び名もある。
 いずれにせよ、このカシオペヤ座の特徴ある星の並びは、北の指標となる重要性からも、古くから人々に親しまれてきたことがわかる。
 冬の日本海はきびしい。日和山にのぼり、当時の船乗りたちは、北天高い「いかりぼし」を見上げながら、あらためて気を引き締めたことだろう。

上の図を参考に、カシオペヤ座と北極星を見つけてください。
Nov.2004


1980年3月卒 天文部OB(前新潟県立自然科学館天文学芸員)
巻高校教諭 中沢 陽

E-mail:nakazawa.yoh@nifty.ne.jp
HP(URL):http://homepage2.nifty.com/nakazawa-yoh/
テーマ曲:星空のかなたに(Copyright:中沢 陽 1995/Piano:大澤俊秀)
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