天文コラム「星空のかなたに」
vol.16 天の珠玉

 北風のゆるんだ晴れた夜には、思いきって外へ出てみてはどうだろうか。夜空は一年中で一番美しい星々のきらめきにつつまれて、冬の星座たちが勢ぞろいしている。
 なかでもひときわ明るく輝くおおいぬ(大犬)座のシリウスは、まるでダイヤモンドのようである。おおいぬ座は狩人オリオンの猟犬である。
 星座のなかで一番形が整った星座といわれるオリオン座には、赤い色のベテルギウスと青白いリゲルが輝き、その色の対比があざやかだ。ベテルギウスは大きさが太陽の500倍以上もある赤色巨星で、年老いた星である。「三つ星」の南には、肉眼でもボーッと見えるオリオン大星雲(M42)があり、ここでは今も星が生まれているといわれている。
 そのオリオンめがけて突き進んでくるかのように見えるおうし(牡牛)座には、右目の所にアルデバランが赤く輝いている。おうしの肩のところにはプレアデス星団(M45)が見えている。この星団は生まれてまもない120個ほどの若い星の集団だ。日本では古くから「すばる」の名前で親しまれている。清少納言が枕草子のなかで、「星はすばる、・・・」と一番に賞賛していることはあまりにも有名だ。
 おうしの角の先には、かに星雲(M1)がある。これは今から950年ほど前に、大質量の星がその最期に大爆発を起こした姿である。爆発の際に宇宙にまき散らされたガスやチリは、再び新たな星を生み出す材料となる。
 このように、はなやかな冬の夜空は、無言のうちに私たちに星の一生を教えてくれるのである。

「すばる」
冬の夜空には7個もの1等星が輝いている。そのなかで、ベテルギウス、シリウス、プロキオンを結んでできる「冬の大三角」は、冬の星座さがしの目じるしになる。
Dec.2004


1980年3月卒 天文部OB(前新潟県立自然科学館天文学芸員)
巻高校教諭 中沢 陽

E-mail:nakazawa.yoh@nifty.ne.jp
HP(URL):http://homepage2.nifty.com/nakazawa-yoh/
テーマ曲:星空のかなたに(Copyright:中沢 陽 1995/Piano:大澤俊秀)
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