天文コラム「星空のかなたに」
vol.18 夏の星めぐり

夜空が十分暗く空気の澄んでいる場所で見る真夏の星空は、思わず蒸し暑さを忘れてしまうほど華やかだ。それは明るい星がたくさん輝き、天の川が一年中で一番明るく、北から南へ頭の上を流れているからである。

七夕伝説の舞台ともなった天の川は、古代の人々にとってまさに“天上を流れる川”であった。エジプトでは「天のナイル川」、インドでは「天のガンジス川」、中国では「銀漢」または「銀河」と呼ばれた。そして、それが星の大集団であると最初に見破ったのはガリレオであった。望遠鏡の威力である。

天の川の中ほどに、大きな十字の星の並びが見えている。これが「はくちょう座」で、南に向かって飛ぶ白鳥の姿をしている。白鳥の尾のところに輝く一等星は「デネブ」という名だ。天の川のほとりには、「こと座」の「ベガ」、そして対岸には「わし座」の「アルタイル」が輝いている。この三つの星を結んでできる大きな三角形を「夏の大三角」という。ベガとアルタイルは七夕の「織り姫」と「彦星」である。

天の川をずっと南に行けば、Sの字の形に星が並ぶ「さそり座」がある。さそりの心臓には赤い星「アンタレス」が輝いている。

さそり座の東は「いて座」。さそりの見張り番である。あまり明るい星はないが、ひしゃくの形をした六つの星の並びが目印で、これを、北の空に見える「北斗七星」に対して「南斗六星」、あるいは、「ミルクディッパー」(ミルクをすくうもの)と呼んでいる。こちらは、西洋で天の川を「ミルキーウェイ」(ミルクの道)と言うことに対応している。

いて座は、私たちの銀河系の中心方向にあたるため、この付近の天の川はたいへん変化に富み、最も美しく見えるところなのだ。私たちが肉眼で見ることのできる最も深遠な宇宙の光景である。

荒海や 佐渡によこたふ 天の河  (芭蕉)


夏の星座と天の川

Aug.2005


1980年3月卒 天文部OB(前新潟県立自然科学館天文学芸員)
巻高校教諭 中沢 陽

E-mail:nakazawa.yoh@nifty.ne.jp
HP(URL):http://homepage2.nifty.com/nakazawa-yoh/
テーマ曲:星空のかなたに(Copyright:中沢 陽 1995/Piano:大澤俊秀)
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